『観察力を磨く名画読解』という本の感想・レビューをお伝えします。
この本はタイトルを一見すると美術に関する本の印象を受けるかもしれませんが、その内容は間違いを少なくするコミュニケーション方法について解説してくれているものでした。絵画についての知識は一切不要で、むしろ前提とする知識がないほうが本書中で解説される事実の見分け方のプロセスを楽しめると思います。
KTK(高速大量回転)法の実践家デビっちんです。
ビジネスや誤りのないコミュニケーションに必要な客観視を鍛えたい人にはおすすめの本です。
なぜなら実在する名画を題材に事実を見分ける体験と答え合わせをすることができるからです。 自分では客観的に見ているつもりでも実は主観かもしれないですし、見方にバイアスがかかっていることもありますので、本書を通じて今一度目の使い方、考え方を確認してみましょう。
また、美術館に行く面白さがわからない人にもおすすめできます。絵画や彫刻の技法や技術、歴史的背景を学ぶのではなく、目そのものの使い方を学べる本ですので。
見ることから観察することへ。
アートは事実として長年存在しているもので、タイトルと説明文で観察したことの答えあわせができます。細部まで観察して表現することで、発見力や表現力が鍛えられます。今まで見向きもしなかった物や代わり映えのない事実が、新たな可能性の塊に見えてきます。それはすなわち、新しい「目」を手に入れることと同じです。
興味があれば、是非チェックしてみてください!
【観察力を磨く名画読解】ってこんな本です。
目というスパコンの使い方を学ぶことで、情報収集能力、思考力、判断力、伝達力、質問力を向上できるというのが本全体の概要です。
その目の使い方、考え方の気づきを得るためにアートの中でも名画と言われる便利な教材が用いられていました。絵画についての解説はほとんどないので美術的な知識向上は期待できませんが、コミュニケーション能力全体が向上する内容です。
上記の内容について本書中では「知覚の技法」として解説されていて、米国では生死の判断を迫られる医療機関や軍隊、警察関係者や一流企業のCEO、学生、公務員、家庭の主婦(夫)にまで活用されていることが記載されていました。どんな分野であっても役立つ内容ということがわかりますね。また、2001年、イェール大学の研究者たちによって、アートを見ることで観察力が鋭くなることを証明した研究事例の記載もありました。
本全体の流れに目を向けると以下の順番で展開していまして、
- 観察(Assess)
- 分析(Analyze)
- 伝達(Ariculate)
- 応用(Adapt)
数ある絵画を通して客観的な事実の取り出しすことから始まり、それを元にした考えの導き方、その考えをどういう形すれば聞き手に伝わりやすいかというところまで学びの刺激を受けることができる内容です。
最初にサラッと全体を読んで感じたのは、タイトルのつけ方が微妙のように感じたことです。「名画読解」とあるので美術に関する知識向上に役立つのかな?と予測していましたが、それはまったくと言っていいほど増えないことがすぐにわかりました。
そもそも、タイトルのつけ方が微妙のように感じました。
原題は以下なので、
VISUAL INTELLIGENCE
SHARPEN YOUR PERCEPTION, CHANGE YOUR LIFE
視覚的知性向上があなたの知覚を研ぎ澄まし、あなたの生活を変える
というような感じに直訳した方が的を得ていると思います。
それでは全体の概要はこのくらいにして、いつものように本文中から気づきを得た3つの表現を紹介します。
【観察力を磨く名画読解】感銘を受けて行動や考えが変わった3つの表現
アートを題材にする意義は、生活全般を向上させる
アートのよさは、まさに何百年も前からあることなのだ。アートは消えない。
出典:『観察力を磨く名画読解』P.29 著:エイミー・E・ハーマン
観察力を磨くのであれば、別にアートを題材にする必要はないのでは?と感じていました。
例えば、人間観察でもいいし植物の成長を記録する観察日記でも観察眼は鍛えられるのでは?と思っていたからです。
しかし観察力を磨くためには、アート鑑賞を題材にすべき理由を読んで納得させられました。
効率的に観察眼を鍛えるためには、自分が観察した内容に対する答えが必要だったのです。
たとえば人間の行動を研究する際、どこか町中で人間観察をすることもできるだろう。目の前を通り過ぎる人々が何者で、彼らの服装にどんな意味があって、どこへ向かっているのかに思いをめぐらせればいい。だが、通行人が視界から消えたあとはどうだ。自分の推測が正しかったかどうかわからずじまいになる。そこへ行くとアートには答えがある。描かれているのが誰(または何)で、いつの時代の、どこで起きた出来事で、どうしてそういうポーズをしているのかがわかっている。美術史家のデイヴイット・ジョズリットが述べたとおり、アートとは”途方もない量の経験と情報の蓄積”なのだ。私たちの観察力、分析力、コミュニケーション力を鍛えるのに必要なすべてを備えている。
出典:『観察力を磨く名画読解』P.29 著:エイミー・E・ハーマン
美術作品を見て、そこに何が描かれているかを説明する能力は、仕事での打ち合わせや人に何かを教えること、緊急時の状況説明などに役立ちます。人に何かを伝える際、つまり、生活のあらゆる場面で役に立つことになります。
美術作品に関する知識が乏しいために美術館や博物館にはあまり興味がありませんでしたが、今後は積極的に絵画や美術品を見てみようという気持ちになりました。
美術品は背景にある歴史や知識がなくても楽しめます^^
自分独自の知覚フィルターを認識する
ものの見方は、人によってちがう。ところが日常生活においては、誰もが同じ見方をすると思い込みやすい。視覚には、非注意性盲目をはじめとするさまざまな不完全さがあるのだから、他者が自分と同じように見ると決めつけてはいけない。そもそも対象を正確に見ている人など、ひとりもいないのかもしれない。
出典:『観察力を磨く名画読解』P.64 著:エイミー・E・ハーマン
「百聞は一見に如かず」という諺がありますが、一見したからといって、それが正しいとはいけないのかもしれない……、と今までの常識が崩れ落ちました。
ものの見方がまったく同じ人はいないことがわかると、では自分は何を基準にして物を見ているのかという問いがたちます。その答えについても言及されていまして、本書ではよくある知覚フィルターとして以下の3つが紹介されていました。
よくある知覚フィルター
- 見たいものを見る
- 見ろと言われたものを見る
- 変化に気づけない
自分がどんなフィルターを通して物を見やすいかがわかれば、別の視点から考察しやすくなりますね。そうすれば見落とした条件がないか確認できたり、人とは違った視点で物事を考えられるようになります。
無意識にやっていることを意識してやってみると新たな発見を得られますね!
アート鑑賞の手順は、読書の質を高める
大事なのは――
- 全体を捉えつつも、細部をおろそかにしないこと
- 複雑さを恐れないこと。結論を急がないこと。
~中略~
- 疑問を持つ心を忘れないこと
~中略~
- 客観的事実だけを扱うこと
出典:『観察力を磨く名画読解』P.331~332 著:エイミー・E・ハーマン
あとがき部分に記載された、本書のまとめとも言うべき「知覚の技法」についての解説です。
デビっちんは現在、KTK(高速大量回転)法という本の読み方の根幹を成しているのですが、「知覚の技法」と共通点が多いことにも共感を持ちました。
- 全体を捉えつつも、細部をおろそかにしないこと
→ 部分と全体の往復
- 複雑さを恐れないこと。結論を急がないこと。
→ わかるところだけ読む、今すぐわかろうとしない
- 疑問を持つ心を忘れないこと
→ センス・オブ・ワンダー
あとがき部分だけでなく、本書全体でKTK(高速大量回転)法と同じじゃん!という内容が多いです。
ということは、KTK法を実践していくことは観察力を高めることですし、逆に考えれば、観察力を磨くことで高速大量回転法の質が高まるんじゃないかなーと思います。
読書に特化したKTK法(高速大量回転)法についての本は、こちらが一番わかりやすいです。
どんな本でも大量に読める「速読」の本 (だいわ文庫)
共通することを学ぶと相乗効果を発揮ですきますね!
おわりに
本書を読んだきっかけは最近学び始めたタロットカードです。占い方は同じでも、その解釈は占い師によって様々だということに興味があったのです。カードに描かれた図柄から何を見つけ、どういうストーリーにするかというヒントを得たいと思っていたときに見つけた本でした。
その程度の動機だったので、読むにつれて内容にグイグイと引き込まざるを得ませんでした。嬉しい誤算^^でした。
本書を読む前までは美術品を見ても「なんだかいいなー」とか「これは気に入らないなー」くらいというザックリした主観しかありませんでしたが、読了後は興味がなくてもちょっと時間をとってみるようになりましたし、そこで見つけた事実をベースに背景を推察したり、説明文を読んで知覚のギャップを埋める楽しみを見いだせるようになりました。
つまり、生活に一段と潤いが出るようになったってことです。
大人になるにつれ観察すること興味を持つことが薄れがちになります。アート鑑賞を通じて、子どものようなキラキラした目を取り戻すことができるのかもしれません。
アートを教材にすれば、複雑な状況はもちろん、一見すると単純だが、実は深い意味を持つ場面も分析できる。皮肉ながら、平凡でよく知っていることについて語るほうが、難しいことが多い。なぜなら、そちにおもしろいことや、いつもとちがうことが潜んでいるとは誰も思わないからだ。大人になるということは、複雑な世界の成り立ちに無感動になり、斬新で、革命的で、緊急度の高いものだけに目を奪われることでもある。ライバルに差をつけるためには細かいニュアンスを丁寧に拾わなければならないというのに、経験や直感に頼って細部を切り捨ててしまう。毎日のように目にして、処理しているものこそ、きちんと見るべきだというのに。
出典:『観察力を磨く名画読解』P.30 著:エイミー・E・ハーマン
というわけで、『観察力を磨く名画読解』を読めば、視覚に関する「気づき」を大きくアップデートできます。
もともと、とあるセミナーに参加して「気づきの力」の大切さは知っていましたし、人よりは観察眼に優れていると感じていました。しかし本書を読んでその深度が増しました。
「気づきの力」を高めてくれるセミナーはこちらです。
「イヤでも身体から力が抜けて仕事が楽になるワークショップ」完全版
https://online.pc5bai.com/u/winxls_at/3676
デビっちんの受講時は対面のみでしたが、今ならオンラインで学ぶことができてお得です。
自分の好きなタイミングで何回もくり返し見ることができるのですから。
本セミナーでは視覚だけでなく、内面や思考の気づきについても触れられており、自分自身に対する「気づきの力」を高めることで仕事も日常生活も楽にすることができるようになります。
最後に「気づきの力」について書かれた本の感想も記事にしていますので、よかったら読んでみてください^^
それでは今回はこのへんで。
デビっちんでした♪