『わかったつもり 読解力がつかない本当の理由』という本の感想・レビューをお伝えします。
本を読んで、
「わからないことはなかった。だけど質問を受けたり、設問があると回答に迷う」
「他人の感想文を読むと、自分と違って良く読めているな、と感じる」
という状態を誰もが感じているのではないでしょうか?
その状態から「よりよくわかった」状態に導いてくれるのが、今回記事にした本です。
KTK(高速大量回転)法の実践家デビっちんです。
本のエッセンスとしては、大きく以下2点です。
- 「わかったつもり」は一種の安定状態のため「よりよくわかろう」とする行動を阻害すること。
- 「よりよくわかる」ためには、「わかったつもり」の状態に陥ることを認識し、一度その「わかった」状態を壊し、一段上の「わからない」状態にする必要があること。
「わかりたい」という目標を達成するために、真逆の「わからない」状態を目指すのが自分1人では決して到達できなかった極意だと感じました。
本文中にある例題をこなすことで、自分がいかに「わかったつもり」であるか認識させられ凹みますが、その悔しさは今後の読書生活を有意義にすること間違いないと思いますので、興味があればチェックしてみてください!
【わかったつもり 読解力がつかない本当の理由】ってこんな本です。
本書を簡単にまとめると、文章をより深く理解するためには「わかったつもり」の状態を抜け出さなければならないと説く一冊です。「わかったつもり」は一種の安定状態で、そこから先の探索活動を妨害していまいます。何を原因に「わかったつもり」に陥り、そこから脱出するにはどんな方法を用いればいいかが述べられていました。
本全体の構成に目を向けると、1章で「わかったつもり」には多くの人が陥ることを体感・認識し、2章で文脈の多様性と偉大さを体感することができ、「わかったつもり」を探索する地図と道具を整えます。3章で「わかったつもり」の特性、4章でその原因となる要素を知り、最後の5章で「わかったつもり」を壊し「よりわかった」状態への到達方法を学ぶことにつながります。
最後に簡潔なまとめがあるので、本書のエッセンスをすぐに知りたい人はそこだけ読めば時短になります。
とはいえ、本書に記載される豊富な具体例を読み、いかに自分が「わかったつもり」に陥っているかを体感し、その上で「よりわかった」状態に到達するために必要な道具を獲得していくのが良いと思います。道具を知ることと使えるようになるのは別だからです。
それでは全体の概要はこのくらいにして、いつものように本文中から気づきを得た3つの表現を紹介します。
【わかったつもり 読解力がつかない本当の理由】感銘を受けて行動や考えが変わった3つの表現
「わかる」/「わからない」の分岐点
最初に結論をお伝えすると、「わかる」/「わからない」の分岐点になるのは「部分間の関連がつくかつかないか」です。
突然ですが、本文中に紹介されていた例文を読んでみてください。
布が破れたので、干し草の山が重要であった。
出典:『わかったつもり 読解力がつかない本当の理由』P.33 著:西林克彦
単語や文法、文章の構造がわからない人はいないと思いますが、意味的にわからなかったのではないでしょうか?ちなみに、デビっちんはしばらく考えてもわかりませんでした。
「布が破れた」という意味はわかりますよね。
「干し草の山が重要」という意味もわかります。
しかし、この2つの分が因果関係で接続されると突然わからなくなるから不思議ですよね。つまり、前の文章と後ろの文章に関連性が見いだせないから、文全体の意味がわからなくなっています。
では、次の単語があったらどうでしょうか?
パラシュート
「パラシュート」という一語があるだけで、先程の例文の意味がわかっちゃいます。
布が破れたので、干し草の山が重要であった。
出典:『わかったつもり 読解力がつかない本当の理由』P.33 著:西林克彦
パラシュートの布が破れて落下速度が速くなり危険。だからクッションとなる干し草の山があるかどうか重要だ。
というように、「パラシュート」という単語で、情景がイメージでき、前の文章と後ろの文章の関連がついたので、「わかった」という状態になりました。
今回は「わからない」から「わかった」という状態の変化でしたが、部分間の関連が以前より、より緊密なものになると「わかった」から「よりわかった」「よりよく読めた」という状態になります。
ここからわかることは、本を読んでいて「わからないなー」と感じたら、どの部分と部分の関連がつかないかを見つけてみるのが1つの解になります。
どの部分と部分の関連がつかないかを見つけてみる
さらに転じて考えてみるとと、人にわかりやすい文章を書く際は部分間の関連性を意識すればOKってことだと感じました。例えば、文と文と、段落と段落、章と章、そうすれば多少文法や言葉の使い方が間違っても全体の印象としてはわかりやすく納得できる文章になるのかなーと感じました。
「わからない」のは、何と何の関連がついていないから?
文脈の多様性と偉大さ
文脈によって、受け手の持つスキーマのどれが発動されるかが決まります。つまり、文脈が異なれば、異なるスキーマが発動されます。
出典:『わかったつもり 読解力がつかない本当の理由』P.61 著:西林克彦
「文脈」をものすごく簡単に説明すると、「物事・情報などが埋め込まれている背景や状況」と言えます。
また、「スキーマ」とは、あることがらに関する私たちの中に存在している、ひとまとまりの知識のことです。
先の例文で言えば、「パラシュート」という単語を見て、
パラシュートの布が破れたので落下スピードが加速して危険
という知識やイメージを連想することが「スキーマ」です。
異なる文脈を使用すれば、以前はほとんど意識されないまま、漠然とした意味しか引き出していなかった部分が、はっきりと意識され、そこからより細かくクリアになった意味を引き出せる可能性が出てくるのです。
出典:『わかったつもり 読解力がつかない本当の理由』P.72 著:西林克彦
「よりわかった」状態に到達するためには、文脈を変えてくり返し読むのが効果的だとわかりました。ではどんな文脈を使えばいいかが問題になりますが、文脈は無数に見いだせるので、意識しないとそのときの気分によって変わってしまいます。
そこでデビっちんは、以下の3つの文脈を使って本を読むようにしています。
- 著者の視点
- 自分の得意なこと、熟達していることの視点
- 今勉強していることの視点
ある程度文脈を固定することで、部分間の新たな関連を見つけやすくなるのでオススメです^_^ただ何回も何回も数をこなしても得られるものが少ないと感じている人は、文脈を意識してくり返し読むようにしてみてください!
文脈を変えて、何度も読む!
「わかったつもり」の原因と壊し方
「わかったつもり」になってしまう原因は大きく3つに分類されます。
- 「全体の雰囲気」という魔物
- 文脈の魔力
- ステレオタイプのスキーマ
「わかったつもり」から「よりよい読み」へは以下のステップで進展します。
- 「わかったつもり」の状態を認識する
- 新たな文脈による、部分からの新しい意味を引き出す
- 引き出された意味による矛盾・無関係による「わからない」状態
- 新たな無矛盾の関連づけによる「よりわかった」状態
ここで需要なのはステップの1番最初だと感じています。
「わかっている」けれど「大雑把」――通常これが私たちの一読後の状態です。すなわち、私たちは、一読後は、まず「わかったつもり」の状態にあるのです。
出典:『わかったつもり 読解力がつかない本当の理由』P.168 著:西林克彦
いつでも「わかったつもり」であるという状態を認識できないと、その次の探索をしようと行動できないからです。
- 自分はまだ「わからない」状態である
- この物語をもっとわかりたいと思う
その状態をが普通にならないと、同じ本を何度もよむことで新たな文脈を活用し新しい意味を引き出し、それまでの理解に対する矛盾や関係の「わからなさ」を克服し、「よりわかった」状態に至ることはできないです。世の中には情報が溢れ、もっと他の情報を求める方が有意義だからと感じるからです。
おわりに
好きな人と「つきあいたい」と思って色々努力してがんばって、いざ「つきあった」ら、満足して今までのキラキラ感がなくなる。そんな人いますよね……。
デビっちんはそんな人間じゃないと思っていましたが、本に対しては同じような扱いをしていたんだなと反省されられる内容でした。
「わかった」ことに満足せず、「わかった」状態を一度壊して「わからない」状態にし、「よりわかった」状態につなげることを強く意識して本を読んだり仕事に結びつけたりしていこうと思います。
ということは、恋愛でケンカすることは全然悪いことじゃなくて、より仲良くなるために必要なイベントなのかもしれないです。
ケンカ = 「わかった」状態を一度壊す
より仲良くなるという目的がないとダメですけどねー。
読解力を上げたい人は、こちらの本と併せて読めばより効果的です!
別の観点から「よりわかる」ための問いの立て方が解説されています。
知っていることと考えることの違い、数字が出てきたときに考えるべきことが解説されています。
それでは今回はこのへんで。
デビっちんでした♪